「銀さーん」
「あー?」

気だるそうに返事したが、が何か言おうとするたびに胸が高まる。だって今日は、バレンタイン。

俺も菓子会社に踊らされているらしい。いや、別にそんなに欲しくないけどね。甘いものは好きだけど、自分で買えやいいし。くれるって言うならもらうよ?俺の目の前にいる、愛しい彼女からなら尚更。

「あのさ」
「何だよ?何かくれるの?甘いものとかさ」
「まだ何も言ってないよ?」

欲しがってますと言わんばかりの言葉に、は苦笑いした。どこかのメガネのガキじゃあるまいし、バレンタインに浮かれすぎだ。は手元に隠してあった紙袋をテーブルに置くと、俺を見ながらにっこり笑った。ついにやってきた、俺のバレンタイン。

「別に置いただけだよ」
「え、くれないの?」
「今考えてるとこ」
「何だそれ!焦らし作成か!小悪魔か!」
「だって今日の銀さん、ずっとソワソワしてて面白いんだもん」

はクスクスと楽しそうに笑った。自分じゃ必死にバレンタインに興味ないって面してたつもりだったんだけど。銀さん、あのメガネと対して変わらないかもしれない。

「じゃあいいよ。俺甘いもの嫌いだしー?」
「分かった。自分が作ったものは自分で食べるね」
「待て待て!今のはちょっとした反抗期だから!食わせてください」

綺麗にラッピングされた箱を今にも破りそうなを止めると、次はさっきより大きい笑い声になる。

「銀さんってば可愛いんだから。はい、どーぞ?」

可愛いと言われるのは男として複雑だが、笑顔でどうぞって言われたらそんなのどうでもよくなる。どうぞって、お前も食べちゃうぞ。だって今日はバレンタインだし。意地を張ったものの、差し出されたチョコをあっさりと食いつくした俺。だが、に焦らされた上にまんまと罠にはまったまま終わりたくない。ホワイトデーまで待てない仕返しをどうしようか。策を練っていると、最近、テレビで話題になったアレを思い出す。

「おい、逆チョコが流行ってるって知ってるか?」



い匂いに
わされて
だって、今日はバレンタイン

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