朝、教室に入ると一際目立つ机が目に入った。今日はバレンタインで、生徒たちはどこか浮かれている。だが、この学校では手作りチョコを渡す生徒は少ないだろう。
「おはよ、光邦」
「おはよぉ〜、ちゃん」
「おはよう」
机の上にはチョコが山のように積もっていた。この席の主は、バレンタインにうってつけの人物。毎年、光邦がもらうチョコの量に驚愕する。
「毎年のことだけど…凄い量だね」
「えへへ、美味しいそうでしょ?」
にんまりと笑みを浮かべる光邦。その横では、崇がせっせと光邦が貰ったチョコを段ボールに入れていた。もちろん崇もたくさん貰っていて、既にモリの席には段ボールが並べられていた。
「バレンタインって光邦のためにあるようなものだよね」
「でも僕が欲しいのはないんだよねぇ〜」
「こんなにあるのに?」
「そうなの、まだ食べたことないんだぁ」
甘いもの好きの光邦が食べたことがなく、欲しがっているチョコとはどんなものだろ。きっと凄いものに違いない。
「それってどんなの?」
「とぉっても美味しそうで可愛いの。いじめたくなっちゃうねぇ〜」
いじめたくなるようなチョコがこの世に存在するのだろうか。チョコは世界に色々あるが、聞いたことがない。私が知らないだけ?
「あと、かなりおにぶさんでねぇ〜」
「本当にそんなチョコあるの?」
光邦はからかっているんだろう。可愛い見た目とは反対に、意地悪なところもある。私の疑問に光邦は口を尖らせた。椅子からぴょんと飛び降りた光邦に、耳を貸してと言われたので、言われた通りにする。可愛くていじめたくなる鈍い甘いものの正体を教えてもらった。それは何とも意外な…意外すぎるものだった。驚いた私を見た光邦は、相変わらずニコニコしている。
「「ハニー先輩!」」
廊下から後輩に呼ばれた光邦は、呑気に返事をして後輩の元に向かった。
「…」
崇の静かな声は、今までの会話が嘘だったんじゃないかと思うほど落ち着いていた。それと対照的に、光邦に言い逃げされた私の心臓はうるさかった。顔も真っ赤だったのだろう。崇は私の顔をまじまじと見つめて、一言放った。
「…チョコというより、イチゴみたいだな」
「うるさいな!」
どんな
ものよりも
いっそのこと、食べられちゃうか